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[ レポート ]
村濱章司氏「たった15分で誰でも出来るストーリー構成法!」
・開催:2009.10.31
・場所:秋葉原UDX内「東京ディストリビューション・オブ・コンテンツ・セミナー」 (略称:TDCS)
・TDCS事務局様のご好意で「3DCGに強い元ゴンゾの方のセミナー」ということで、取材の機会を頂きました。




村濱章司氏
ゴンゾを離れ、新会社「ラムダフィルム」を立ち上げた。
 10月31日、秋葉原UDX内にある 東京ディストリビューション・オブ・コンテンツ・セミナー(略称:TDCS) にて、「たった15分で誰でも出来るストーリー構成法!」と題したワークショップが開催された。

 講師はゴンゾの設立者であり代表取締役社長であった、村濱章司氏。
 ガイナックス所属時代に「ふしぎの海のナディア」のプロデューサーを担当。その後ゴンゾで「青の6号」や「LAST EXILE」などヒット作をプロデュースした実績を持つ。

 本ワークショップではまず、村濱氏より短時間でストーリーコンセプトを生み出すテクニックが語られ、続いて受講者がグループに分かれ、ストーリーを生み出すグループワークが行われた。



ストーリー・コンセプトに重要な「5エレメンツ」
 村濱氏はゴンゾでファン向けのアニメーションを作るにあたり、企画や内容の中に5つの要素を入れることにしたという。
 「5(ファイブ)エレメンツ」と命名された5つの要素は以下の通りで、ストーリーコンセプト開発の際に非常に重視しているとのこと。

5エレメンツ
1:『ヴィジュアル・インパクト』
  見たいと感じさせる視覚的な衝撃。
2:『カタルシス構造』
  水戸黄門の信賞必罰のような、気分がすっきりする構造化された展開。
3:『ドラマチックな展開』
  最終的な目的地と正反対のところからスタートさせる。時系列に沿って状況や心情が変化する。
4:『キャラクター配置を工夫』
  良いキャラクターが上手く配置されているとキャラクター同士が化学反応を起こし、良い作品になる。
5:『燃えと萌え』
  「美少女とメカ」など、相対する2つの要素。


ストーリーを分解して組み立てる

ブレインストーミング的に、ストーリーの要素を挙げていく
 次に、ストーリー作りの具体的な方法が解説された。
 村濱氏は「分解できれば組み立てることができる」という発想をストーリーの作成に応用しているとのこと。

 その作成法とはまず、ストーリーを『舞台』『時代』『ジャンル』『アイテム』『ストーリー構造』の5項目に分け、それぞれの要素をブレインストーミング的に挙げていく。
 『舞台』は地中海、無人島、学校。『時代』は明治時代、中世、原始時代。というように思いつくまま列挙する。
 続いて、各項目から無作為に要素を1つずつ選び出し、ストーリーとして組み立てる。

 「舞台は学校。時代は現代。ジャンルはロボットもの。アイテムは剣と魔法。ストーリー構造はみにくいアヒルの子」と選んだなら、この設定を満たすストーリーを組むことになる。
 セミナーではこの設定を使って村濱氏が5分で考え15分で文章にまとめたというストーリーが紹介された。


グループワーク

ホワイトボードに賞金を貼る村濱氏
 続いて受講者がグループに分かれ、これまでに説明された手法でストーリーコンセプトを作るグループワークへと移った。

 グループワークの途中で、最優秀のグループには賞金を授与することが発表された。プレゼン終了後に「この手法では、必ず一番をとりたいと思わせることが重要」と賞金を出した意図が説明された。

 各グループが選んだ要素と、それを元に考え出したストーリーは次のとおり。



同僚の女性にフラれた主人公。バーで酒を飲んでいたところ火星人にさらわてしまう。火星で人体実験を強要されるが「もし人間として地球に戻れるなら、女にモテる体にしてほしい」と頼む。人体実験の苦痛に耐えた後、地球に戻ったが記憶喪失となっていた。
その後のストーリーは2案。
・モテる体になっていたが記憶喪失のため、振った女が言い寄ってきても
 振り返してしまう。
・女にモテる体になっていたが、女性の体になっていた。
 そのうえ振った女が同性愛者だった。




 キャッチコピーは「心の砂漠を乗り越えろ。この恋愛が世界を変える!!」。
 敵対する2国の話。2国は10年以上前に蜜月の期間があり、許嫁の王女と王子が結婚し平和を作るはずだったが、戦争が起こり2人は引き裂かれてしまう。
 2人は幼少の頃、顔を隠して会っていた仲なため、王子は王女の顔を忘れていた。
 その後王子は、ドリル付き潜砂艦の艦長に選ばれる。
 一方、王女は平和を取り戻すため、男装した侍女2人を潜砂艦に潜り込ませる。そして士官となるうちストーリーが展開していく。




 西暦2010年のローマ的帝国。人類はすべての管理をAIにゆだねていた。AIの権力が世界を席巻する中、権力に抵抗した主人公はモンスターの姿に変えられ、虐げられていた。上流階級者の惨殺を繰り返す主人公。
 この世界では、最下層に奴隷としてアンドロイド的ロボットが入っていた。
 民主国家の建設を考える一人の知恵を持ったアンドロイドは主人公と意気投合する。共同で国家転覆を狙うが、二人は反りが合わず互いに破滅してしまう。
実は、AIはこの出来事を把握しており、すべてはAIの手のひらの上で転がされていたのだった。

3グループのプレゼン後、村濱氏は「要素の組み合わせによって、ストーリーを作りやすい作りづらいがあると思う」と断ったうえで、「内容」「プレゼン」「ブッ飛び度」の点から評価し、最優秀作にBグループを選んだ。



今回の手法のメリット
 この手法は「その時のメンバー、時間、雰囲気によって大きく左右される。ツールとして必ずしも使えるか分からない」としながらも、「職業的にアイデア、コンセプトをいくつも提示していかなければならない場合や、得意分野に集中してアイデアを出してしまう傾向を破壊する場合に実効性が高い」と述べた。
 さらに「クリエイターは“とっておきの一つ”を何年も執念深く通そうとすることが多い。しかし私は10個、20個考え、その中で一番面白いものをとる。色んな人に話して一番喜んでくれたものを採用する。その方が時間を効率的に使えると思う」と持論を語った。

 続いて行われた質疑応答では、ストーリー構築の話題にとどまらず、受講者からアニメビジネスに関する質問まで出され、プロデューサーである村濱氏のセミナーならではの話が展開された。
 最後に村濱氏が「レベルの高い人たちとこういう会を持てたことで、非常に楽しい体験をさせて頂いた」と感想を述べ、3時間近くに渡るセミナーが終了した。




関連リンク
東京ディストリビューション・オブ・コンテンツ セミナー(TDCS)
ΛFILM(ラムダフィルム)
村濱章司のブログ




 
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